「命が大切」という珍しい時代

 人の命が大切になったのは,つい最近のことだ。人類の歴史のほとんどの時期において,人の命は「余っていた」。ほぼ常に,得られる食料で養える人口を,現実の人間の数が上回っていた。余っていたから,どうせ満足に食えない命なら,神への生贄にするのは本人にとっても名誉なことだった。戦争は,人口を減らすためのとても効果的な方法だった。

 現在でも,命が大切でない場所は世界にたくさんある。命が大切なのは先進国だけだ。その程度のものだと思っていると,生きることが楽になる。